鍼灸治療をやっていくと新しい治療法や研修会を渡り歩く人がいますよね。
人の心理として「探究心」があるので当然です。
そういう先生に限って中途半端に終わってしまい、「自己流鍼灸」になっています。
だけど、自己流鍼灸も根拠・エビテンスがしっかりしていれば良いです。
自己流鍼灸でもどんな疾患でも同じアプローチなら良いですが、
- ◯◯疾患には経絡治療風
- 筋骨格系疾患には局所を使った運動鍼治療風
◯◯風になっていませんか?
しっかりした柱が必要です。
柱にするのには何が良いか?
わたしは解剖学の知識だと考えています。
それもアナトミートレインは経絡とも親和性が高いのでオススメです。
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※解剖している動画を掲載しています。
食事中の方や、献体を見ることになれていない人はご注意ください。
アナトミートレインで鍼治療
わたし自身は鍼灸学校時代、解剖学は苦手でした。
解剖学を知らなくても中医学を理解すれば治療はできる!と考えて(言い訳?)いました。
しかし、最初に病院に勤務した時、中医学だけでは全く役立たないと痛感しました。
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- 鍼灸師でも中医学をほとんど勉強していない人もいます。
- ドクターと会話するときも中医学は役立ちません。
- もちろん患者さんにも・・。
情報の共有は病院や整骨院などでは、解剖学の知識や整形外科的な内容になります。
そこで解剖学を勉強し直しました。
学生時代は患者さんと接することが無かったので、
- どの筋肉が重要なのか?
- どの筋肉が傷みやすいのか?
- どの筋肉がどう動けば改善できるのか?
それがわからず、全ての筋肉を覚えようとしていました。
しかし、臨床をしながら勉強すると優先順位がわかり、覚えやすかったです。
その数年後に発売された、アナトミートレインを購入しました。
わたし自身は、経絡は
筋肉や筋膜、神経や血管などの連結されたものを簡便に伝えるツールだと理解しました。
書籍にも書いてありますが、アナトミートレインと経絡は似ている箇所も多いけど、違うものです。
経絡とアナトミートレインの共通点
人体には、通常は、大小含めて約600を越える筋肉が存在します。筋肉は、大別すると骨格筋、平滑筋、心筋に分けられる。骨格筋だけで約400個と言われています。
経穴の数も学会などで違いますが、361穴と言われています。
筋肉も経穴も単体だけで語られるのでは無く、連動性を考えます。
患部とは遠く離れた経穴を使ったり、首の緊張を腕のマッサージで治療したりしますよね。
経絡や経筋、アナトミートレインを利用しての鍼治療の場合、何でもかんでも「線」(流れ)に合わせて遠隔治療すれば良いもではありません。
例えば
- 腰痛に委中
- 腹痛に足三里
アナトミートレインの言葉を借りると、連結していないと意味がありません。
例えば
アナトミートレインの浅前線と足陽明胃経
舌骨下筋は胸骨前面には付かずに、胸骨柄の後面にはまり込んでいます。
したがって、舌骨下筋は浅前線の筋筋膜と同じ筋膜面上にはありません。
動画をみると胸骨付近への筋肉の付着部がよくわかりますね。
しかし、頚部を過伸展して、オトガイを上方に突き出すと、前胸部から舌骨下筋に続く機械的接続が触診できます。
簡単に言えば上を向くと首の前が伸びる感じがしますよね。
こういう状態になると、アナトミートレインの浅前線や、足陽明胃経が繋がります。
実際の鍼治療にアナトミートレインの考え方を活かす
猫背タイプの人が首の痛みを訴えたとします。
浅前線と足陽明胃経で考えてみましょう。
猫背タイプの人はアゴを突き出した姿勢になっています。
こういう患者さんは前胸部や頚部前面を触ると痛がります。
猫背タイプの患者さんが首の後ろが痛いという場合、風池・天柱を使用すると、もちろん効果はあります。
しかし、しっかりと調整するには前頚部の状態を整える事が必要です。
- 前頚部の緊張の緩和。
- 腹部上部の緊張の緩和。
治療ポイントでもあり、効果測定の場でもあります。
もっと遠隔が必要な場合、内庭穴、足三里、陰陵泉穴や三陰交穴も取穴のチョイスになるでしょう。
臨床力のアップには観察力が必要です。
観察するときに役に立つのが身体の動きを3つに分類する方法です。
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3つの動きがわかったら先生自身も患者さんと同じ姿勢になってください。
- すごく右に捻れていたり
- すごく左に傾いていたり
- すごく前傾姿勢になっていたり
変な歪んだ姿勢になるでしょう。
この変な姿勢を社会通念上の良い姿勢にしていると痛みが出てきます。
例えば
お腹がすごい痛い時、お腹を抑えてすごく前傾姿勢になりますよね。
この姿勢を社会通念上の良い姿勢にしてみると辛く無いですか?
お腹を触ると突っ張ったような痛みがあるかもしれません。
呼吸も苦しく感じるかもしれません。
このような姿勢の時に足陽明胃経の経穴や浅前線に関連する筋肉へのアプローチをすると効果が高くなります。
脈診や舌診、筋肉テストも良いですが、まずは患者さんの姿勢を診ることからはじめてみましょう。
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